位相歪、群遅延時間と試聴テスト  Phase distortion, group delay time and listening test

 前頁「オーディオシステム基本要件、基本特性」に記載した中で、基本波及びその倍音関係にある多数の周波数の間の位相歪、群遅延時間と音質について試聴実験を行う。

システム構築上の課題としてこのことはかなり論議されているので個人としても確認してみる。 

 

 「周波数特性が同一で、群遅延時間が許容できる範囲であれば、位相歪と音色(音質)は関係ない」はかなり確かなのだろう??(群遅延時間を条件に追加)

と言う自分なりの仮説を確かめてみたい。

                         

システム構築の課題:この問題は下記のようにシステム構築上の課題の一つである。

 実際に位相歪と群遅延が起こるのは主にSPとチャンネルデバイダー。

SPの 位相歪と群遅延時間はSPBOXが決まれば決まってしまうので、色々調整することは基本的には難しい。

チャンネルデバイダー:特にデジタルタイプを使用すればフィルターの次数なども色々選択できる。

 このときの組み合わせとして、

 ①.伝達関数[1] (6dB/oct の組み合わせ)で出来上がりの位相歪無し、遅延時間無しを達成し、矩形波やステップ波形の崩れが無い様にすべきなのか。

 ②.SPユニットの固有の周波数特性、歪特性、耐入力、位相特性の影響を出来るだけ少なくして良好な周波数特性、歪特性、耐入力特性を得る為に、高次次数のフィルターを使用した方が良いのか。

等の課題がある。  

位相歪を持つ電気回路で作成した音源、試聴テスト

試聴用音源サンプルファイルの作成

 

 瞬時に切り替えて比較できるように、チャンネルデバイダーの低域、中域、高域を加算回路により加算しその出力を録音し、特性の異なるサンプル音源ファイルを作成する。

具体的には下記の比較1~3の各特性を通過させて録音した音源ファイルを、比較1~3の順番に並べて 「試聴用サンプルファイル」を作成し聞き比べ差が判別できるか調べる。

 

特性比較

1.6dB/oct Butterworth                2.12dB/oct Linkwitz-Riley              3.48dB/oct Linkwitz-Riley

比較1.伝達関数[1]で原音どおり。群遅延無し、ステップ応答良好

比較2.位相が見かけ上1回転、群遅延300Hzで0.8ms、ステップ応答は中域を逆接続する為負の方向に スパイク。

比較3.位相が見かけ上4回転、群遅延時間は許容値の線上、ステップ応答は群遅延時間分遅れ。

   (遅延時間300Hz4.7msは500Hz3.2msと同程度で前ページの許容値程度)

           (見かけ上の回転:チャンネルデバイダー周波数、位相特性の注釈を参照ください) 

 

 その他の特性 

チャンデバ:周波数、位相特性」「チャンデバ:矩形波、インパルス、群遅延、STEP」のページを参照ください)

試聴用サンプルファイル と試聴

 

 下記サンプルファイル(WAVファイル:CDフォーマット)をダウンロードし、Windows Media Player などで繰り返し再生し、音色や定位などに差が聞き取れるかテストする。

試聴は、ヘッドホーン、フルレンジシングルコーンSP、マルチSPシステムなどで聞き比べる。

白鳥 6,12,48.wav
Wave オーディオファイル 9.7 MB
ピアノ 6,12,48.wav
Wave オーディオファイル 8.1 MB
Dialog 6,12,48.wav
Wave オーディオファイル 7.5 MB
Ballet 6,12,48.wav
Wave オーディオファイル 4.1 MB

 ヘッドホーン試聴テストでは差を聞き取ることは出来無かった。SPシステムで再度試聴予定。

取りあえずこの時点で

 

 基本波とその高調波関係にある多数の周波数間の位相歪が大きくなれば群遅延時間やステップ応答などにかなりの差異が認められるが「周波数特性が同一で、群遅延時間が許容できる範囲より小さければ、位相歪による音色(音質)の変化を判別することは出来なかった」

 

 群遅延時間が許容値より大きくなった時音質にどのような変化があるかは未確認 。

 この試聴実験から、伝達関数[1] を達成する 6dB/oct にこだわり過ぎる事は無いようだ。

SPユニットの固有の周波数特性や位相特性は理想的なものはあまり無いので、これらの特性を考慮した次数のフィルタを使用したほうが全体として良好な結果が得られそうだ。

なお、8次の48dB/oct の組み合わせはフィルターだけの群遅延時間が許容値いっぱいなので、これにSPの群遅延時間が加わわり許容値を超えることもありそうなので、4次の24dB/oct までぐらいが良さそうだ。

実際のマルチスピーカーシステムでは

 上記の音源サンプルファイルは、クロスオーバー周波数ではそれぞれ位相の異なる2個の音源を電気的に合成しているので「1個の新しい位相を持つ音源」になっています。

 電気回路で合成すると帯域ごとの時間軸のずれや反射の影響がない。

 実際のマルチウェイSPシステムでこの条件を満たすものは「2個のユニットが同軸上で振動板の位置も同じ」ものが必要であると考えられる。

 

 実際のシステムの多くは、クロスオーバー周波数付近でそれぞれ位相等の異なる2個の音源が別々に配置された2個のユニットからそれぞれ別々に直接音場に放射され、反射波などの経路も変わり複雑になるものと思われる。

 

 上記実験(OHMの法則)とは別の条件が付加されるため、実際のマルチウェイSPでは位相の関係や反射波の影響なども含め、周波数特性や音源の定位などに影響を与え音質評価に差が出ることも考えられる。

これらについては「マルチアンプスピーカー」「チャンネルデバイダー」「システムの試聴比較」の各ページで検討する予定。

 

参考

1.位相シフターを通すと音色は変わるという記事はあります。TIMEDOMAIN(位相と時間に関する歪) :ここ

但し、フィルターとしては、12dB/oct が推薦されているので、位相歪はあってはならないとまでは 言われていない様だ。

 

2.上記実験は標準的な3Wayとしてクロスオーバー周波数を300Hz,3000Hz程度を想定したものですが、サブウーハーなどで使用する場合はクロスオーバー周波数75Hz程度でフィルター特性と群遅延時間は下 図のようになりこれ に SPの群遅延時間を加えても「CCIRの勧告75Hzで24ms」を超えるこが無いよ うに注意が必要でしょう。

75Hz:群遅延時間

 

 

フィルター特性と群遅延時間

 

クロスオーバー周波数:75Hz

での群遅延時間

6/6dBoct:1ms

12/12dB/oct:3ms

24/24dB/oct:7ms

48/48dB/oct:17ms


 

*4.2012.09.15:更新 

*3. 2012 .03 .02 :修正

*2.2012・01・27 :オーディオファイル雑音混入の為更新、追加、変更。群遅延特性追加

*1.2012・01・17 :新規作成